この一ヶ月、随分金を使った。水、食糧の買い出し、日赤とフリージャーナリストへの募金、支援物資の購入、タクシー代、ガソリン代、放射能対策、充電用電源の確保、子供の交通費、温泉宿泊代、銀地金の購入、などなど。全部でどのくらいかな150万くらいか。

この一ヶ月、全然仕事にならなかった。オレは研究者だから研究していればいいのだ、などと割り切ることは到底できなかった。

母親の友人が津波にやられた。いきなり、有無を言わさずに水にのまれてしまったのだろう。人の痛みはわからない。でも窒息はほんとうに苦しい。おそらく2-3分苦しんだ後、その人はこときれてしまったのだろう。後に残ったのは死体だけ。その人の苦しみは回想されることすらない。そんな苦しみが、おそらく3万人を超える人たちを襲った。

被災地まで、車でほんの1時間半。海沿いの惨状は、海岸に近づくといきなり眼前に現れる。がれきとはつまりゴミ。汚泥、アスベストや重金属も混じる産業廃棄物。あんな所にいて希望がわく人は一人もいないだろう。

原発のことも考えざるを得ない。いろいろ情報は集めたけど、わからないことが多すぎる。結局できることは子供を疎開させること、線量のモニター、逃げる準備、食べ物に気をつけることくらい。今更レベル7などと言われても、同じこと。

こんなときに、自分の仕事は果たして何の意味を持ちうるのだろうか。そんなことを考えて苦しかった。今後のことも考える。おそらく日本人の価値観は今後しばらく大きく変わるだろう。クールな日本のイメージは完全に失墜、外国人は去り、自粛は続く。経済活動は停滞。多くの人が金銭的にも苦境に襲われるのだろう。おそらく、もうほんとうに必要なことしかできなくなる。それはいいことかもしれない。少なくともオレは、もうあれこれ考えずに単純に生きたい。自分がだいじだと思うことをやろう。もう周りに振り回されず、震災の影響、震災のショックを口実にさせてもらおう。41才生きてきて、自分に大切な物は何かということがわかってきたところなので。やりたいようにやってみようと思う。