正月に、奥さんがお友達から借りた村上春樹の東京奇譚と山田詠美の風味絶佳を読んだ。
村上春樹は2つくらいしか読んだことないけど、あの生活臭のない世界の描き方はなんとなく好き。東京奇譚は短編集で、意味のありそうな偶然についての話から始まる。こういう話は好きなので大変面白かった。生活臭のなさも申し分なし。でも読み進むうちに、あまり面白くなくなっていき、特に最後の話には心底がっかりした。品川猿という題なのだが、猿が名前を盗むとか、猿がしゃべったりとか、猿が主人公が母親から愛されていなかったことを知っていたりとか、そんなあり得ないことに頼って話を展開しているところがどうにも気持ち悪い。どうせだったら猿のかわりに妖怪でも出せばよかったのに。何故猿である必要があるのかさっぱりわからなかった。何か深い意味が隠されているのだろうか。そうだとしたら知りたい。
山田詠美も一時期大好きだったのだが、今回のは気持ちよく読めない。「絶佳」とか「馥郁」とかそういうあまりこのごろ使われない言葉を発掘してきて、その言葉の力に頼っている感じ。それでいて、「条件反射」なんて言葉が二度出てくるのだが、その使い方がまるっきり間違っている。パブリックイメージとは裏腹に、徹底的に選び抜かれた言葉と調和のとれた文体の美しさが山田詠美の魅力だと思っていたのだけど。