ガープの世界 [DVD]

ガープの世界 [DVD]

昨日ガープの世界をみた。高校生のときに一回みて、その後大学にはいってからビデオで一回くらいみたのではなかったか。3回目の今回は、おそらくガープが死んだときよりも年上になってしまった。繰り返しみてはじめてよさがわかる映画もあるし、繰り返し見るとつまらない映画もある。ガープの世界は今回も実によかった。でも前回見たときとはずいぶん印象が違っていた。
まずこれまで気づかなかったことが二つ。一つは漫画BECKに出てきたことだが、夜に車のライトを消して走るシーン。とても重要なシーンなのだが、前は気づかなかった。あとは、息子のWaltが事故で死んだこと。これも前見たときは気づかなかった。高校生のときは、ヘレンが車のなかで学生に口でしてあげるシーン、なんとも居たたまれない気持ちがして、何であんなことするんだろうと思ったのだが、今回はそんなに嫌な感じはしなかった。lustとどう折り合いをつけていくかということがこの映画の重要なテーマの一つだと思うのだが、今回はそれほどこの点については引っかからなかった。
前見たときは、ガープが作り上げ、維持しようとした家族像、そしてfamily manぶりがとても息苦しい感じがしたし、へレンが浮気をしたのはそのせいだろうと思ってよくわかるような気がしたのだが、今回はあまりこの点でガープに違和感を覚えなかった。たとえば彼が好きな、子供が寝ている姿をみるということは今や僕にとっても特別なことである。そんなこと、高校生に共感できるはずもない。 
今回一番ずしりと来たのは死について。ガープの母が、みんな年をとって死ぬのよ。というシーンがある。前見たときは、そんなの当たり前、知ってるよ。という感じで気にもとめなかったが、今回はこの点がこの映画のメインテーマなのだなーと思った。There will never be another youという曲が劇中には近所の人のサックスの演奏という形で、またエンディングにナットキングコールの歌で流れるのだが、これもまさにこの映画のテーマだと思う。あなたという人間は一人しかいない。身の回りに好きな人、嫌いな人、大事な人、ちょっと軽んじている人、関係ない人、いろいろいるが、どの人も受精して生まれて育てられて成長していく過程でいろいろなことがあって、歳を重ねて死んでいく。そんなことはあたりまえなんだが、何とも大変なことだ。生きている人の数だけそんな大変なことが進行しているのである。人それぞれに、短いような長いような時間をかけて作られたその人の世界がある。タイトルのthe world according to Garpというのはそういう意味なんだろうか。Garpのように特別な境遇じゃなくても大変なことだと思う。そんなことを考えて、みた後なかなか眠れなかった。

昨日は折りしも高校のときの友達から我々の老後は厳しいだろうというようなメールが来てた。この問題も、要するにどう死ぬかという覚悟にかかってると思う。高校生の頃は、いざとなったら自殺すればいいと思っていた。そうすれば老後の問題なんか全て解決する。でもそんな潔い死を選ぶことのできる人は数少ない。一度死んだらそれっきりもうやり直しはできないので、多くのひとはずるずると病院で死んでいくのだ。どっちにしてもいずれ死ぬんだが。僕の場合、老後のこともどうやって死ぬかについてもまだ全然見通しがたてられないのだが、高校生のときからみると、生きることへの執着は着実に増している気がする。