幼稚園か小学生低学年くらいの頃、寝ているときに自分のせいで世界が破滅するというような感覚に襲われ、起きて繰り返しごめんなさいごめんなさいと泣き叫んだことを覚えている。たぶん10分くらいで落ち着いたと思う。昏迷状態だったんだと思う。まだ家の人は起きていたので寝入って間もない頃だったのだろう。 医者をやっていた頃、当直室でよく似たようなことがあった。状況から、やはり寝入ってそう時間がたっていない頃、えもいわれぬ死の恐怖にとりつかれて叫んでしまう。叫んだら落ち着く。覚醒後は、死の恐怖があったことは覚えているのだが、怖かったということが想起できるだけで、恐怖感そのものを再体験することはできない。パターンが決まっており、突然起こるので発作と表現してもいいかもしれない。昨日久しぶりにそれがあった。子供と一緒に横になっていて寝入ってしまったとき、死ぬのが怖くなり、寝ている子供の前で叫んでしまった。奥さんはまだ起きていたのでやはり寝入ってそう時間がたっていない頃だったんだろう。これはたぶん夜驚症といわれるものなのだろう。ネットの情報によると、Non-REM睡眠のステージ3か4、しかも睡眠時間の前半に生ずる。子供に多いが成人にもみられるという。成人でこの症状がみられるのは1%だって。べつに治療を要するような病気ではないのだろうが、とっても怖いのである。the fear that dwells inside a man というマークボランの歌の一節がぴったり来るような、ふだんは脳の中に隠れた恐怖。その恐怖感を記述するのは非常に難しいのだが、とにかく死の恐怖であることは確か。オレがなくなっちゃうんだよ、消えちゃうんだよ、消滅するんだよ、うわーって感じ。今こうして考えても自分がなくなるというのはどういうことかわからないし、死ぬのはイヤだなーとは思うんだが、死ぬのは怖いことではないはずだと思う。生まれる前に戻るだけのことだし、深い麻酔がかかった状態と同じだと思うし。麻酔してもらったときは時間は全く存在しなかった。「はーい00さんゆっくり数えて1、2、3、はーい手術おわりましたよー」って感じだった。それに死んだら怖いと感じることもできなくなるわけだから、恐れることはないのである。でも、あの夜驚症の発作はそういう理屈ではどうしようもないのである。とにかく怖い。たまにしかないからまだいいけど、あれが毎日あったらきっと気が狂う。日常生活にストレスがあると症状が出やすいって。ストレスなくすよう努力してみますか。夜驚症は遺伝すると書いてある。上の娘もたまに寝ていて叫ぶことがあるのだが、遺伝したのかな。僕みたいに長引かずに早く消えてくれるといいなと思う。